
第四話
「さて、何から話しましょう。」
そうアイロスが語りかけてきた。ローレアは無言のまま、その場に立っていた。
「まぁ、そうですね。では、私どもの話、そして、あなたの秘密について話しましょう。」
アイロスは机の上にあったベルを鳴らした。あたりの空間にベルの音がこだました。
「およびですか」
煤けた感じのローブをまとった、人が背中を丸めて杖を突きながら暗闇の中から現れた。
「君の記憶を話してごらん」
そうアイロスが話すとローブをまっとった人が話し始めた。
「かしこまりました。旦那様。では話させていただきます。客人の方、手に持たれたその剣をお納めください。そして、その椅子にかけて私の話をしばし聞いてください」
ローレアの意思とは関係なく椅子につかされた。そして剣も机に立てかける状態にさせられた。
「無理に動こうとしないほうがいい、この空間は、主である私自身でも、時の門番である彼らのルールに逆らうことはできない。いわば、彼らが法なのだよ。」
無理に動こうとするローレアにアイロスがそう話した。
「ここでは、いかなる戦闘のご法度。だから私が君を襲うことはけしってないから安心したまえ」
ローレアは無理に動くのをやめ、机についておとなしくし始めた。
「では、お話させていただきます」
老人の時の門番が話し始めた。
さて太古の昔、
世界には意思を持った二つの樹がありました。
一つは、創造と誕生を意味する『ユグラシルド』
もう一つは、破壊と死を意味する『ラディカンス』
という二つにの樹がありました。
その樹の下には、
それぞれ国家が樹の加護の元、存在していました。
やがて、『ラディカンス』は一つの剣を生み出しました。
加護の元にあった国家は剣に導かれるまま、
破滅と破壊の道を歩むようになりました。
『ユグラシルド』の加護の国家を敵対し、
滅ぼそうとしたのです。
その状況をみた『ユグラシルド』は六個の実を生み出しました。
その実は、国家の中にいた6人の人物に渡されました。
そして、『ユグラシルド』に導かれた6人は、
『ラディカンス』の国家に立ち向かいました。
結果から言いますと、
『ラディカンス』の傲慢さゆえに疫病が流行り、
自ら自滅する結果になりました。
『ラディカンス』はその後『ユグラシルド』が最後に生み出した七番目の実によって封印され、
『ユグラシルド』自身は自らの命を六個の実に託しやがて枯れてしまいました。
老人は話し終えるとあいている席についた。
「これが俺に話したかったことか」
ローレアはアイロスに話しかけた。
「君はこれが昔話、つまり童話だと思っているのかい」
「あぁ、こんな馬鹿げた話が現実にあってたまるか。意識をもった樹なんてありえない」
「そうだれもが思うだろう。ただし君は実際に見、そしてその副産物を使っているといったらどうするかね」
「はぁ・・・・・」
ローレアは首を傾げた。
「さて続きの話に移ろう」
アイロスは話を一旦打ち切るとまたベルをならした。
「およびでしょうか」
そういってアイロスの背後から出てきたのは背筋が延びた人だった。声からして女性なのは分かった。老人のときと同じでローブを身にまとっていて顔をみることができなっかた。
「次は君の番だよ」
「分かりました。ご主人様。では私がお話させていただきます」
『ユグラシルド』が生み出した実は、
封印され伝説となりました
封印された場所には魔力が漏れ、
やがて『煌玉』が産出されるようになりました
『ラディカンス』はといいますと
一人の少女と共に封印され、長き眠りにつきました
それは、深く暗い無音の世界
だれも入ることのできない世界のはずでした
しかしその封印は長くは持ちませんでした
悪しき心を持つものがその封印をといてしまったのです
封印が解けたことがわかると『ユグラシルド』の実は目覚め
新たな使い手を捜します
その使い手はやがて『麓華仙師』とよばれ
現代の『幻燈師』の元を作ったを言われています
さて今から千年ほど前になるでしょうか
奪われた剣を取り戻すために実の使い手は動き
取り戻すことができました
残念なことに、奪った本人は剣に飲まれ廃人になっていたそうです
二度とこんなことがおきないよう七番目の実の封印から
さらに六つの実を持って封印を施したそうです
そういうと女は話をやめ老人の向かい側の椅子についた。
「さてこれで古に伝わる幻燈師の真の意味が分かっただろう。」
アイロスは紅茶の入ったカップを手に取り飲みながら話した。
「だが、俺に何の関係がある」
「確かに今の話だけだと関係がないだろう。では、君の過去について、また紅い山狐の本当の意味を教えよう」
アイロスは手を二回叩いた。
「なんかよんだ」
男の子のやんちゃな声がした。声のしたところはテーブルの上だった。何もないところに突如と現れた小さい男の子。いままでのと同様にローブを羽織ってはいたがフードははずしていた。
「だめだよ、そこの上に乗っちゃ。また怒られるよ」
そういったのは小さい女の子だった。椅子の上から男の子のローブを引っ張っていた。
「そうですよ、私が手出さないからといってそういうことしたらだめですよ」
男の子は膨れた表情をしながら机から降りた。
「さぁ、彼の過去を教えてあげて」
「は〜い、マスタ〜。では話しますね」
帝都で一人の男が呼び出された
男の名は『ティルス・ジェスト』
彼は皇帝から直々に二つの命を渡された
『ユクドラシル』と『アディカンス』の調査及び回収
ティルス・ジェストは一人で長きに渡り調査した
やがて彼はその事実にたどりついた
皇帝に報告した後
彼は6人の実の使い手を探し出した
矛と盾
つまり『アディカンス』の剣を矛とするならば
『ユクドラシル』の実は盾だ
やがて6人の使い手は『紅い山狐』とよばれる部隊になった
しかし彼は疑問を持ち始めた
果たして自分のしていることは正しいのか
他の国を制圧するために古代の封印を破ってまで使うべきなのか
彼の心は疑念に包まれた
そして
彼は裏切りを決意した
「嘘だ、そんなはずは無い。隊長が裏切るはずが・・・・」
「しかしこれが真実だよ。ローレア君。君は隊長・皇帝・軍に利用され、自らの真の力を知っていない。君が真の力を知るころには何をすべきか分かるだろう」
しばらくの間、二人の間に沈黙が起こった。
確かにローレアは、部隊に編成された時に実の話を聞いていた。しかしそのときは、ただの御伽噺程度にしか気にしていなかった。
「さて、話はこのあたりにしておきましょう。また機会がありましたら、今度こそゆっくりとお茶でも飲みましょう。」
あたりの空間がゆがみ元の景色に戻り始めた。
「さて、一つだけよいことを教えましょう。あなたの、持つべき真の実はあの事件のあと別の場所に飛ばされ封印されています。また実は現在では『煌玉』の上位品として『煌珠』とよばれている。探す手がかりになるでしょう。ではまた会いましょう」
そういうとアイロスは指をならした。
空間が縦にさけ、その裂け目にアイロスは入っていった。
『ユクドラシル』に選ばれた実の使い手よ・・・・・
君には過酷な未来が待ち受けている。
それに飲み込まれないように心を強く持っていなさい。
続く