
Corum Online - EXCAVATION
第一話
フェン・ジャイトはビヨンドと呼ばれるダンジョンを探索していた。
「おい、ラハイド。貴様デマ言いやがったな。」
フェンは、そう言うとラハイドと呼ばれる男の胸倉をつかんだ。ラハイドと呼ばれる男はルディロスで情報屋を営んでいる。彼の元にはダンジョンの情報やレアアイテムなどの情報が入ってくる。ラハイド自身は普段から酒びたりの日々をすごしている。目の下を赤くして客に答える姿から『酔いのラハイド』なんて呼ばれることもある。
「おいおい。ちょっとまてよ、入ってきていきなり何なんだ?」
「貴様、クリスタルの情報があると言ったよな!じゃ、なんだこれはクリスタルか?よく見やがれ。」
ラハイド少し突き飛ばす形で手を離し、フェンは一つの石をカウンターの上に置いた。黄色く輝く宝石のような石であった。
「貴様、これはどう見ても『イエロービジュ』じゃねかよ。ふざけるのもたいがいにしろ。」
「どれどれ」
ラハイドはとぼけた感じで石に手を伸ばし、石を見た。
「悪い悪い、こりゃ間違いなく『イエロービジュ』だな。すまんすまん。代金は半額返すからまぁ、簡便してくれ」
そういうとレジから情報料の半額と思われる金額を取り出し、フェンに渡そうとした。
「半額だと、ふざけるな!俺はあの時確かな情報だなと聞いたよな!なのに結果はどうた。クリスタルかこれは、ただのビジュじゃないか。明らかにお前の汚点だ。情報料は全額返すのが当然だろ!」
とラハイドをにらみつける。ラハイドは普段の彼からは創造できないような顔でフェンを真剣に見つめ一言。
「すまん、残りの金は無い。酒で消えた」
フェンは呆れてしまい、情報料の半額だけを手にして店から出ようとした。
「ちっと、まてよ。残りの金とはいかねぇが、これで簡便してくれ」
といってラハイドは千鳥足で、一つの紙切れをフェンに差し出した。
「未確認のクリスタル情報だ」
「ふーむ、本当にここにあるのか?B4までくまなく探索したがそれらしいものはないしもしかして、またガセだったか?」
とフェンは呟いた。このダンジョンに生息しているモンスターを難なく屠る程度の実力はとうに持っているためすでにB5の入り口まで来ている。ラハイドからもらった、情報の紙を見ながらB5に降りていくフェン。
「後はここだけか。情報によるとリッチロードと呼ばれるモンスターが持っているとは聞いたが...」
と身体から微妙にずれた装備を直しながらフェンは周りを見回した。
気を引き締めながら探索を続けるフェン。ふと明らかに他のモンスターとは違う雰囲気を感じ取った。
「ム?やつか?リッチロードか?」
「我、加護の元に命じ、我、刻を司る者也『ウィンドテイルズ』」
「我、加護の元に命じ、我、魔力から身を守る者也『ブレシング』」
と続け様に補助魔法を唱えモンスターの襲来に備える。
しばらくした後、『ズゴォオーー』という音と共にリッチロードと思われるモンスターが現れた。そしてクローンとジュぺリアモンスターが守護するかのように共に現れた。
「クッ!数が多いな!だが。負けるか!クリスタルを手にするために!!」
フェンは剣を構え雪崩れ込んでいった。
取りあえず敵の動きを鈍くして隙をつく!!
「汝、我が言霊の元に従い、我が力の元に屈服せよ。『ランディングサポート』」
リッチロードをはじめとしたモンスターの動きが鈍る。フェンの戦闘スタイルはランディングサポートで相手の動きを鈍くし、自らの動きをウィンドテイルズで加速させる。このスピード差を生かし敵を翻弄するのだ。
「クローンやジュぺリアまで相手にできるほどの戦力はこちらには無い。となればリッチロードに絞るのみ!!」
クローンやジュぺリアの鈍った攻撃を巧みに避けリッチロードに対峙した。
「いくぜ!リッチロード!」
フェンは攻撃を開始した。次々と剣による攻撃がヒットしていく。
だが...
『グォーン』
とリッチロードが叫ぶとファイアミサイルと思われる炎の弾丸にフェンを襲う。
「グハ!」
と避けきれずにダメージを受けてしまうフェン。事前に掛けておいたブレシングによりダメージは最小だ。
リッチロードに呼応するかのようにクローンやジュぺリアもファイアミサイルを放ってきた。これらの連続攻撃に耐え切れずすかさず回復に取り掛かる。
「我、加護の元に命じ、我、生命を司る者也『リメージ』」
これにより傷が癒されていった。
「クッ。きついな。さっさと決めないともたない。一気に決める!!」
リッチロードに攻撃を再開した。そして何度かの攻撃を繰り返すうちにリッチロードがよろめき態勢を崩し肩ひざをついた。
「チャンス!これでどうだ!」
フェンは剣を大口開けたリッチロードに向かって突きたてた。喉に剣が刺さりもがき苦しむリッチロード。
「まだまだこんなもんじゃすまないぜ!!」
「汝、我が言霊に命じ、我が聖なる波動の力にて屈服せよ『ラウンドレインジ』」
なんと喉元に刺さった剣で直接ラウンドレインジを零距離射撃を行ったのだ。さすがのリッチロードもこれにはたまらい。
『ギャアォオー!!』
あまりの苦しみにのたうちまわるリッチロード。取り巻きの魔物達も迂闊に攻撃すればリッチロードに当たってしまう為なかなか手を出せないようだ。
「オラオラオラー!!」
とラウンドレインジを連続で放っているようだ。
「よし、これでとどめだ!」
と剣に力を込め喉を突き破った。振り返るとリッチロードが霧のように消え去っていくところだった。そして光り輝く宝石が残されていた。
「よっし!」
と喜々と手に取るフェン。じっくり品定めをしようとしたがふと思い出した。取り巻きの魔物はまだ残っていることも。そして気づいたランディングサポートもウィンドテイルズもブレシングも効果が切れてしまっている事を。
「やべぇ。まずいな。」
と焦るフェン。背中から魔物達が襲い掛かろうとしていた。
「ちぃ。逃げるか。」
とフェン。魔法を掛け直す余裕も無い。
逃げ出しても補助魔法が無い状態では追いつかれてしまいそうだ。
「クソッ。貴重品だが仕方がない。タウンポータルよ我をルディロスまで運び給え!!」
と巻物を空に投げるフェン。巻物が解け広がると、淡い光が発生しフェンを包み込んだ。それと共にフェンの姿はダンジョンのどこにもすでに存在していなかった。今では一般にまで普及しているタウンポータルだがフェンの時代ではなかなか手に入らない貴重品なのだった。
ルディロスのとある一角にフェンは出現していた。
「ふうー。ちょっとやばかったな。だけどついにクリスタルが手に入ったぞ!あの時はよくわからなかったからな。じっくりと確認をしなきゃな。」と懐から宝石を取り出しまじまじと見つめた。
「...ってこれまたイエロービジュじゃねーかあ!!まーた騙されたーチックッショウ!!!」
と叫ぶフェン。そう、またクリスタルでは無かったのだ。フェンの叫びに村人達はビックリしていたのだが、フェンはその事を気にするほど余裕がなかったのだ。怒りに満ち溢れていたからだ。
フェン・ジャイトはベットの上で横になっていた。上着はいすの上に無造作に掛け、上半身は黒いシャツ一枚の状態だ。この街一番の情報屋と言われる男を信用し、高い金を払ってまでてに入れたクリスタルの情報、それが二回とも偽物だったのだ。とかも価値の低いビジュ。俺は、怒りよりもやる気がうせた。
二時間ほど前
フェンは大通りより一歩裏手に入った路地を歩いていた。情報を買った店に文句を言いにいくところだ。しばらく歩くと、その店に着いたがフェンは持っていた剣を落として愕然とした。
『入居店舗募集中』
つまり、完全に情報屋に逃げられたのだ。フェンはしばらくその場にたっていた。漫画だとこの場面は灰にでもなっているのだろうか?しばらくするとフェンは大声て叫んだ。
「ふざけんなーーーーーーーーーーーーーーー」
「貴方もこの店の主人にお金を貸していたのかしら?」
女性の声が後ろからしてきた。フェンはとっさに後ろを見る。格好は割りと動き安い服だった。赤を基本とした色。腕には羽と宝石をかたどったような紋章だった。
「紅宝珠に白羽・・・トレジャーハンター協会のレンジャーか」
フェンは独特の愛想無い声で女性に答えた。トレジャーハンター協会。目的は世界に散らばるレアアイテムを集め保護することである。構成や成員は不明。分かっているのは協会に属している者はレンジャーと呼ばれ、腕に腕章をしていることだけだ。しかも、評判は良くないのは確かだ。かかわりたくない相手ベスト10に必ずランクインすると言ってもよいだろう。
「あなたも災難ねぇ。ここの主人、酒好きだったために色々なところに借金があったみたいよ。返せなくなったために夜逃げしたんだって」
女性はフェンに微笑みならが答える。フェンは半ば無視の状態でそこを女性の前を去ろうとした。女性はフェンの方を軽く叩いた。
「あなた、仕事しない?『【漆黒の紅】フェン・ジャイト』」
「おい、二度とその字〔アザナ〕を言うな!」
フェンは女性を殺気の満ちた目で睨んだ。
「今日はこのあたりにしておくわ。後日また会いましょう。貴方とは何かと縁がありそうですし。」
と言って女性はその場に立ったまま大通りに向かっていった。
フェンは路地の壁に向かって思い切り殴った。フェンの顔から殺気が消えていく。
夕方になってフェンは宿屋に向かった。お世辞にも綺麗とはいえないような建物だが、宿泊料金が安い。まともな仕事をしていないフェンにとっては仕方が無かった。フェンが宿屋のドアを開けた時、中から聞いたことのある女性の声がしてきた。
「だから、何度もいってるでしょ。予約を入れたのになんで部屋がないの?」
「すみません、しかし、お客様の名前がないのです。また、本日は満室となっておりまして、お客様が泊まれる部屋はございません。大変申し訳ございません」
宿屋の主人と女性が口論をしている。まぁ、このようなことは良くあることだ。フェンは聞いたことのある声だがあまり気にせずに階段を上がっていった。
「あぁ、フェン・ジャイトさんでじゃないですか?」
聞き覚えのある声が彼の足を止めた。フェンは後ろを振り返った。そこにいたのは、さっきラハイドの店の前にいたレンジャーの一人だった。
「ねぇ、部屋が無いんだけど、相部屋してもいいですか?」
図々しく、フェンに相部屋を申し込む。
「断る。大体、なんで見ず知らずのやつを俺の部屋に入れなければいけないんだ?あと、俺はレンジャーは嫌いだ。レアアイテムのためなら、人を騙し、裏切ることを厭わない奴等。反吐がでるほど嫌いだ。」
フェンはそう言ってまた階段を上がっていく。その間、レンジャーの女は絶えずフェンに声を掛ける。フェンのイライラはピークに達してゆく。
ドアの前に来てフェンはレンジャーに一言いった。
「いい加減にしろ。部屋なら譲ってやる。しばらくそこにいろ。」
フェンは扉を思い切り閉めて、中に入っていく。そしてしばらくするとフェンは出てきた。肩に荷物の入った袋を掛けて出てきた。
「どうぞ、図々しいレンジャーさん」
フェンは一言言うと、吹き抜けになっている二階の通路から一階の踊り場まで飛び降りた。そして宿屋の主人と二言、三言話してその場を離れた。
ハンター協会のレンジャー、その組員はレアアイテムを収集することを目的としているが実際に行っていることといえば、貴重な遺跡を破壊し、目的のためなら、人を騙し、裏切り、殺すことさえ厭わない連中だ。フェンの親友も以前レンジャーの一人に騙され、そして死んだ。フェンが見つけたときには無残にも雨に打たれ、冷たくなった状態で地面に倒れていた。
フェンは街の外にある場所に野宿する場所を作った。夜空の中、焚き火を見ながらフェンはあの時の夜を思っていた。彼にとつてレンジャーは憎みの対象でしかなかったのだ。